漫画全話レビュー「めぞん一刻 第154話「TEL YOU SWEET」」 5/5 (3)

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掲載情報

掲載雑誌
  • ビックコミックスピリッツ 1987年3月2日号

 

アニメでは

 

時系列とでき事
  • 1986年10月31日 五代裕作、保母試験に合格

 

この頃のでき事
  • 3月2日 - キヤノンが「EOS650」を発売。同じ日には旭光学工業が「ペンタックスSFX」を発売。
  • 3月3日 - 日立製作所が全自動洗濯機「静御前」を発売。
  • 3月3日 - 武田薬品工業が「アリナミンV-DRINK」を発売。アリナミンシリーズでは初の栄養ドリンク。
  • 3月5日 - 岩手靖国訴訟で、盛岡地裁は首相の靖国公式参拝合憲判決。
  • 3月9日 - トヨタ自動車や東京電力などの出資で日本移動通信(IDO)設立(現在のKDDIの前身)。
  • 3月13日 - 中国残留孤児の定期訪日調査終了。
  • 3月14日 - 日本の南極商業捕鯨終了。
  • 3月17日 - 朝日麦酒が日本初の辛口ビール「アサヒスーパードライ」を発売。
  • 3月18日 - 神戸市営地下鉄西神・山手線の学園都市駅 - 西神中央駅間が開業し全通。
  • 3月18日 - 舞鶴若狭自動車道の丹南篠山口IC - 福知山IC間が開通(舞鶴若狭自動車道では最初の開通区間)。
  • 3月21日 - 中曽根内閣が佐藤内閣・吉田内閣に次ぐ戦後3位の長期政権へ。
  • 3月22日 - アップルコンピュータが「Macintosh II」と「Macintosh SE」を発表。
  • 3月23日 - 予讃線高松駅 - 坂出駅・多度津駅 - 観音寺駅間、土讃線多度津駅 - 琴平駅間が電化(四国では初の電化)。
  • 3月28日 - シャープがパーソナルワークステーション「X68000」を発売。
  • 3月30日 - 安田火災がゴッホの「ひまわり」を53億円で落札する。
  • 3月31日 - 三井物産マニラ支店長誘拐事件の被害者がフィリピン・ケソンで誘拐から137日ぶりに釈放される。
  • 3月31日 - 吉本興業の劇場・なんば花月(大阪市南区。現中央区)が閉館、4月から近隣に新築したなんばグランド花月にその役割を譲る。

 

あらすじ

遂に響子さんと結ばれた五代君。次の試練は保母試験の結果待ちとなります。一刻館住人は、落ちることを前提に残念会の準備をするのですが…。

 

みどころ

  • 五代君保母試験合格
  • 合格祝いの準備もしていた一刻館住人

 

はじめに

今回は五代君が保母試験に合格し、それを響子さんに報告する話です。以前の「草葉の陰から」で、響子さんに「夏まではひとりでいます」=「保母試験までは待ちます」と言われた、あの保母試験の合格発表です。この保母試験に合格していたら天国、落ちていたら地獄です。

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ちなみに、この頃は男女雇用機会均等法ができる前で、今で言う保育士は女性の職場だったので保母、看護師も女性の職場だったので看護婦と言われていました。男女区別無く雇用が均等化されるのは良いことなのですが、一方ではレースクイーンやコンパニオンなども女性募集と書けなくなり、施行当初は混乱もありました。

 

 

作中の時間と現実の時間

めぞん一刻は、作中の時間と現実の時間が完全にリンクしている漫画なのですが、この頃は掲載時期と現実の時間を見比べて貰えばわかるように、もう半年ほど時間のずれが生じています。もう少し詳しく書くと、作中の時間が現実の時間より半年前なんです。この頃は、五代君と響子さんが結婚するまでのイベントが1日刻みで起こるので、現実の時間とリンクさせ、1週間のでき事を1話にするのが厳しくなったのだと思います。ただ最終的には作中と現実の時間は全く同じになりました。

 

保母試験合格=プロポーズ

冒頭の五代君と響子さんの会話の遣り取りや、それに続く響子さんと一の瀬さんの会話を見ても、五代君、響子さんともに、保母試験の合格=プロポーズとの認識で一致していたみたいです。この2人の認識が一致しているのは当然なのですが、部外者である一の瀬さんだけはそのことをしっかり感じ取っていて、一の瀬さんはある状況や条件下の時だけは常識人で察しが良いんです。この辺りの一の瀬さんの独特な立ち位置も、めぞん一刻では今まで生かされてきました。また、五代君は合格発表を見る前にどうプロポーズするか妄想していましたが、これで落ちていたらどうなっていたんでしょうね。

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これもすれ違いの一種

保母試験に無事合格した五代君は、響子さんに伝えるため一刻館に電話をするのですが、一刻館住人の残念会に巻き込まれ、いくら電話をしても繋がりません。電話が鳴っては一刻館住人を振り切って管理人室に向かうのですが、取る寸前で切れてしまう繰り返し。今回の話としては、ただ五代君が合格発表を見に行って、それを電話で響子さんに伝えるとの至極短い話なのですが、こんな繰り返しでいつまでもそれができませんでした。

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高橋留美子さんはテンポ良く話をぎゅっと詰める濃い話も面白いのですが、このようになんでもない短い話を違和感なく引き延ばして面白く見せるのも上手いです。大抵、こう言った場合、引き延ばしてるなあなんて感じてしまうのですが、引き延ばしている感じが無く、引き延ばしですら話がテンポ良く進みます。

 

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合格祝いの用意もしていた一刻館住人

一刻館住人は、五代君からの結果報告が来る前から、当然のように残念会の準備をし、五代君が帰ってくる前からその残念会を始めていましたが、五代君から合格の連絡が来ると、実は用意していたクラッカーを取り出し、合格祝いへと切り替えていました。一刻館の住人は、五代君に集ったりからかったりして、一部では極悪非道とも思える部分もあるのですが、こうやって五代君を思っている一面がところどころに出てくるので、根底では「悪い人たちではない」と思えるんです。

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このシーンは実はアニメの方が良くできていました。漫画では準備していたクラッカーを鳴らすだけの演出だったのですが、アニメでは横断幕ごと合格祝いに変えていて、「実は合格祝いも準備していた本当は優しい一刻館住人」の様子が、より伝わりやすかったんです。このシーンは珍しくアニメの勝ちだったと思います。

 

プロポーズできず

五代君は合格の報告の際、同時に響子さんにプロポーズをしようとしたのですが、十円玉が切れてしまい、結局プロポーズできませんでした。

 

この最後のシーンで、やはり次からの展開を容易に想像できてしまいます。「ああ、次からはプロポーズしようとしてできないすれ違い劇なんだな」と。本来、その先のストーリーが読めてしまうとつまらなくなりがちなのですが、めぞん一刻の場合、仄めかす程度で、わかる人にはわかる描写でしか無いため、パズルを解いたときのような「俺にはわかったぞ(ニヤリ)」的な感覚が襲ってきます。おそらく、めぞん一刻を読んでいる人なら皆が皆わかっているんでしょうけどね。しかしこういった自分はわかったぞの特別感、理解した感って結構大事で、より物語にのめり込んでしまいます。

 

総評

前回で響子さんと結ばれ、そして今回で最大のハードルだった保母試験にも合格し、遂に残すイベントはプロポーズのみとなりました。主要登場人物を1人1人丁寧に退場させ、惣一郎さん問題や保母試験の問題も一つ一つ丁寧に解決させ、そして遂に残す問題は最終問題のプロポーズのみです。この一問が解けたらそれでめぞん一刻は本当に終わりですよ…。

 

始まりがあれば終わりがあるのは当たり前なのですが、ここまで終わって欲しくないと思った漫画は古今東西このめぞん一刻がダントツです。いつまでもこの楽しい世界を見ていたい。そんな気持ちになる漫画です。

 

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